共同宣言賛同企業へのインタビュー

不動産業界の常識を超えて、ライフステージを問わず活躍できる「全社一体」の企業文化

不動産業界は「男性社会」のイメージが強く、女性が少ないのが実情です。しかし、不動産の開発・分譲・管理・運用を手がける株式会社デュアルタップでは、女性社員比率が4割、女性管理職比率が33%と、業界の常識を覆す高い数値を実現しています。さらに、10年以上勤務している社員のうち女性が55%を占めており、ライフステージを経ても長く働き続けられる環境が定着しています。

今回は、同社広報室の室長、総務部/ 経営企画室の部長として広範囲な役割を担う池上優さんにリーダーとしての本音を伺いました。

・女性社員が少ないとされる不動産業にかかわらず高い女性社員比率(約4割)を実現
・育休取得者の復職率100%を実現する手厚いサポート制度
・グローバルな課題に対して全社一丸で取り組む

<プロフィール>

株式会社デュアルタップ
広報室 室長 総務部/ 経営企画室 部長
池上優(いけがみ・ゆう)

異業種から転職し、株式会社デュアルタップにて15 年近く勤務。現在は広報室、総務部、経営企画室の部長として、会社
全体に関わる業務や新規事業の企画立案など、広範囲な役割を担う。ライフステージが変わっても女性が長期的にキャリア
を継続できるよう、環境整備と女性リーダーのロールモデル構築に尽力している。

女性比率は不動産業界では高い「4割」

池上さん: 現在の当社の女性比率は不動産業界では高い4割で、女性の管理職比率は33%です。女性取締役は現在1名(16.7%)と、いずれも業界では高い比率を維持しています。また、10年以上勤務している社員のうち女性は55% おり、ライフイベントを経ても長く働き続けられる環境が定着しています。

長年、自然と女性比率が高い職場環境が続いてきたため、あえて数値目標は設けていません。今後も『数字のため』ではなく、『誰もが働きやすい環境づくり』を通じて結果的に高い比率を維持・拡大していきたいと考えています。また将来的には、女性が1人になってしまった取締役を含め、経営層への登用を積極的に進めていきたいと考えています。

池上さん:リーダー育成プログラムとしては、男女で区別なく階層別のマネジメント研修を実施しています。しかし女性管理職に関しては前例が少ないため、キャリア形成を支援するためにメンタリング制度や、家庭と仕事の両立に関するサポート制度を細かく取り決めています。

池上さん:メンタリング制度では、産業医に加え、女性取締役や私(総務部長)のような役職者が、昇格面談とは別に、女性管理職やリーダーを目指す社員向けに対面で個別面接を実施しています。これは、働く女性が仕事とプライベートをどう切り分け、両立していくかを丁寧に支援するための仕組みです。

このような細やかなサポート制度は、上層部の指示ではなく、現場の声から自然に生まれた仕組みを会社として制度化していった面が強いです。当社は規模が大きくない分、縦横の距離が近く、現場の声がすぐ経営に届く環境です。役員を通さずに「やってみよう」と動ける風土があり、結果としてボトムアップで制度が活性化しています。ロールモデルが少ない中で、役職者やリーダーと話す機会があることは、現場の社員のエンゲージメント向上に役立っていると感じています。

男性の育休取得率は2年連続で100%

池上さん:リモートワーク、フレックスタイム制度、時短勤務(子どもが小学生の間は延長可能)を導入し、多様な働き方をサポートしています。

特に力を入れているのが、産休・育休からの復職支援プログラムです。現在のところ、育休取得者の復職率は100%を達成しています。また、男性の育休取得率も2年連続で100%を達成しています。

池上さん:社員が「また戻りたい」と思える職場になっていることが一番の要因だと思います。産休・育休を活用して、復職後に退職を考える人も少なくありませんが、当社では、長くキャリア形成したいと言って戻ってくる社員がほとんどです。

復職支援のプロセスは非常に丁寧です。産休に入る前に、人事部が社員のキャリアプランを丁寧にヒアリングし、復職時のイメージを持ってもらいます。そのうえで、人事部、総務部、研修担当、現場の責任者が連携し、一人ひとり詳細なプログラムを作成しています。

この取組のポイントは、全社が一体となってサポートするという企業文化です。特定の部署に任せきりにせず、部署のメンバー全体がサポートを「自分ごと」として考えられる環境づくりを会社全体で行うことで、制度が形骸化せずに活用されています。

女性ならではの視点が成果を上げている

池上さん:私が入社した約15年前は、社員の平均年齢が若く、働く女性でライフステージの変遷を迎えるロールモデルが少ない状況でした。でもこの10年ほどを経て、キャリアを諦めずに働き続けられるという実績が積み上がり、それが数字にも裏付けられるようになりました。現在では、育児や介護とマネジメントを両立する女性リーダーがチームを牽引し、大きな契約を持ってくるなどの成果を上げています。

特に、開発部に在籍する女性取締役は、長年第一線で活躍し、女性ならではの目線で開発物件づくりに貢献しています。たとえばコンセントの位置一つをとっても、生活者としての女性視点を生かした細やかな配慮が施されており、それが物件の付加価値となり、当社の強みとなっています。

池上さん:当社はマレーシアにも支店があるため、グローバルな課題として、ハラールに関する配慮にも取り組んでいます。お祈りの時間や食文化の違いはもちろん、コロナ禍ではアルコール消毒剤の使用が宗教上の理由で問題となり、代替品を用意するなど、細やかな文化の違いに対応しました。

こうした課題に対しても、会社全体が「ワンチーム」として対応しています。特定の部署に任せず、全ての部署が同じ意識で考え、社員一人ひとりの課題やキャリアプランに合わせて丁寧に対応する企業文化が根付いています。

経営層における女性の登用をさらに増やしたい

池上さん:これまで制度は整ってきましたが、次に目指すのは、経営層における女性の登用をさらに増やすことです。私自身、1年前に総務部長への昇格を打診された際、無理だと思いました。キャリアもないし、知識も追いついてないし、プレッシャーに耐えられないと思ったんです。でも私自身のロールモデルであった元女性取締役から「女性は自分のキャリアプランを立てるのが難しい。部長になれるのはほんの一握りだから、絶対に手放さないほうがいい」と背中を押され、昇格を決意した経験があります。

経営層が増えることで、継続的なキャリア支援のロールモデルとなり、下の世代が「頑張ろう」と思える環境を広げていかなければならないと考えています。私たちが昇進し、役割や事業を増やしていくことで、若手社員のワークライフを優先できるような環境づくりをしていきたいと思っています。

池上さん:女性活躍推進に限らず、企業全体の課題として、ベースアップと評価制度のさらなる充実を急務として考えています。物件やサービスだけでなく、人事制度においても“付加価値” を生み出し続けられる会社でありたいと思っています。これは、優秀な人材が定着し、国全体の力を高めることにもつながるという、大きな視点を持って取り組んでいくべき目標です。