共同宣言賛同企業へのインタビュー

“楽しく働ける令和の管理職” を増やしたい…女性に必要なのは「男性化」ではなく、自然体で力を発揮すればいい

全国で11 万人のテレワーカーとともに、在宅での働き方を支えるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を展開する株式会社キャリア・マム。業務のアウトソーシングを企業から受託しながら「働きたい人に仕事を届ける」仕組みを構築しています。


今回は、法人営業課の副部長として企業とワーカーをつなぎ、また社内外で女性リーダーのネットワーク作りにも尽力する葛山みずほさんに、これまでのキャリアや子育てとの両立、リーダーとしての思いについて伺いました。

<プロフィール>

株式会社キャリア・マム
ソリューション事業部 法人営業課 副部長
葛山みずほ(くずやま・みずほ)


結婚・出産を経て、2016 年、キャリア・マムに入社。官公庁の就業支援事業を担当した後、法人営業として企業へのアウトソーシング提案を担当。現在は副部長としてテレワーカーに仕事を届ける仕組み作りに携わる。社外の女性管理職ネットワーク活動にも積極的に参加し、女性が自分らしいキャリアを築ける環境作りを推進している。

子どもをきっかけに再び社会とつながる

葛山さん:もともと働くことが大好きで、前職でも忙しく働いていました。ところが結婚後、子どもを授かるために不妊治療に専念することを決意し、仕事を離れました。ようやく出産できたときは大きな喜びを感じましたが、子育てにすべてを費やす日々の中で、社会との接点を失ったように感じる瞬間が多かったんです。子どもはかわいい、でも大人とコミュニケーションする機会が極端に減り、閉塞感を覚えました。そこで「やっぱりもう一度働きたい」と強く思うようになりました。

そんなときに出合ったのがキャリア・マムです。子育て中の不安や孤独感を理解してくれる場所であり、母である自分の経験を生かして働けると感じました。当時は自分よりも子供を優先、自分はボーダーの服を着てママ100%。ゼロ歳児を連れて訪れていた多摩市のカフェスペースにキャリア・マムのオフィスが併設されていて、オフィスで自分と同じような世代のスタッフがパソコンに向かっていきいき働いている姿を見て、ギャップが面白いなと心を奪われました。

葛山さん:最初の3 年間は官公庁から受託する就業支援事業を担当しました。その後、アウトソーシング事業に携わり、法人営業担当として企業を訪問し、会員に提供できる案件を開拓する仕事に移りました。現在は副部長としてチームを率いています。

営業先で企業の方に「効率化のため」だけではなく「キャリア・マムの会員の多くは女性で、色々な働き方を実現したい人たちに仕事を届けるための事業です」と説明すると、多くの企業が共鳴してくださいます。特に、「細やかさや堅実さ、精度の高さ」が仕事の品質面で高く評価され、再受注につながることも多々あります。ただ良いサービスを提供するだけでなく、この「思い」と「品質」がキャリア・マムの大きな強みであり、お客様に選ばれる理由だと考えています。

在宅マネジメントの工夫とリーダーとしての意識

葛山さん:社員のほとんどが女性で、育児や介護との両立が前提です。子どもの送迎や夕食の準備など、ライフイベントに合わせた働き方を互いにサポートし合う文化が自然に根付いています。働き方は在宅と出社のブレンド、またはほぼテレワークが一般的で、私の直属の上司も、20 年近く完全在宅でマネジメントを続けるという働き方を実践しています。

面談で心がけているのは、タスクの達成だけでなく「この会社で何を実現したいのか」というメンバーの思いに耳を傾けることです。出世や昇進にこだわる人もいれば、スキルアップや自己実現を大切にする人もいます。

一般的な会社や男性の場合は出世がモチベーションになりやすい傾向がいままで社会の歴史や文化からもあると思うのですが、女性は出産、子育て、もしくは介護と、生き方や選択肢が多様すぎると思っています。その多様な価値観に応じて役割を提案し、一人ひとりが納得して働ける環境を作りたいと思っています。

横のネットワークから生まれる新しい発想

葛山さん:人材育成策として、勤続年数に応じた長期休暇制度を会社に提案しました。社員が「やりたいことをやる」休暇制度で、そこで得た学びを会社に還元してもらうことを期待しています。仕事と人生の両立を前提とした制度的な後押しで、柔軟なキャリア形成を支援したい考えです。

社外ネットワークでの議論を通じて、“男性性・女性性” という概念にも着目しました。これは、協調性や傾聴力、調整力など女性ならではの強みを評価に組み込むことで、「仕事に入れば私は男性になる」といった“男性化” を強いることなく「自然体で力を発揮すればいい」という考え方です。

葛山さん:女性だけのオンラインコミュニティ参加がきっかけで、異なる企業の女性管理職や候補者との「ご飯会」やワークショップを仲間と開催しています。

管理職になる前の不安や、役割の作り方など、事例が少ない女性管理職の悩みを共有できています。昭和の男性が「タバコ部屋」などで非公式な相談をする文化があったように、女性も「おしゃべり会」を通じて支え合う場が重要だと捉えています。

男性も女性ももはや関係ないという声もありますが、性差や特性は切り離しづらいと考えています。この活動の中で、「女性ならではの特性を生かした指標を考えてみてはどうか」というアイデアが生まれました。従来の「成果」や「数値」だけでは測れない、関係構築力や共感力を重視する指標です。こうした視点が企業文化に広がれば、女性が自分らしく力を発揮できる組織になるはずです。

管理職は「罰ゲーム」ではない

葛山さん:確かに責任が重くて大変だと思われがちですし、「管理職は罰ゲーム」と言われることもあります。でも、女性は人の話を聞く、相手に寄り添う、チームで成果を出すといったマネジメントに不可欠な力を自然に備えています。特別なことをやろうと気負わなくても、その力を生かせば十分にリーダーとして活躍できます。

私自身、高いスキルがあるわけでもなく、むしろ作る資料は間違いだらけ。私より仕事ができるメンバーもたくさんいます。できない自分に落ち込むこともありますが、コミュニケーションをとりながら旗振りをやめないことだけ決めています。あとはメンバーに頼って相談しながらすすめたほうがチームで成果が出たんです。

私は、映画『もののけ姫』に登場する女性たちの姿に、女性リーダーの可能性を重ねています。自分たちの居場所を守るために戦う、支え合う姿勢は、まさに女性の強みだと思います。競争ではなく共生をベースにしたリーダー像を描きたいですね。

葛山さん:女性の生き方はとても多様です。出産や子育てだけでなく、介護や自己実現など選択肢は無数にあります。だからこそ一つの正解に縛られず、それぞれの事情に応じて働き方を選べる制度を整えることが大切だと思います。これは女性だけでなく、男性にとっても意味があるはずです。育児や介護に関わる男性が増えている今、制度や文化を整えることで、誰もが働きやすい社会になると信じています。

葛山さん:管理職になるからといって「特別な力を身につけなければ」と考える必要はありません。普段通りに人の話を聞き、調整し、熱心に取り組めば大丈夫。「ステージに上がる」と気負わずに、自分がもともと持っている力を信じて、安心して一歩を踏み出してほしいです。私は“楽しく働ける令和の管理職” を増やしたいと思っています。