第3回
女性活躍の現在地
統計で読み解く、働き方の変化と課題

文責 : 東京女性リーダーズ応援ネットワーク事務局

日本でも女性の社会進出が確実に進み、結婚後・出産後も働き続ける女性は年々増えています。しかし、「男女が平等に活躍する職場・社会」という視点では、依然として低い女性管理職比率などが問題となっています。一方で、男性の育児休業取得率がここ数年で急増するなど、明るい兆しも見られます。今回は様々な統計データを基に、現状の分析と様々な課題を検証します。

■ 働く女性は右肩上がりでも、管理職比率は伸び悩み

 2023 年に約3124 万人だった女性の労働力人口(15 歳以上人口のうち、就業者と失業者を合わせた人口)は、2024 年には33 万人増の約3157 万人になりました※1。長期的に見ても1990 年から約497 万人増えており、働く女性の数は右肩上がりとなっています。その中身について質的な変化や改善があったのかを、様々な側面から検証していきます。

 企業において女性が真に活躍しているかを示す指標の一つが管理職比率です。当コラムの第1 回でも触れましたが、欧米各国に比べて日本の女性管理職比率は相対的に低いのが実情です。ただ、令和6 年度の「課長相当職」以上の管理職に占める女性の割合は13.1%と、前回調査(令和5 年度)より0.4 ポイント上昇しました※2。下のグラフにあるように、平成21 年度(2009 年度)以降9% 台から12% 台で推移してきました。今回の調査でようやく13% を超えたものの、極めて緩やかな上昇でしかありません。

■女性管理職(課長相当職以上[役員を含む])の割合(企業規模10 人以上)

出典:厚生労働省「令和6 年度 雇用均等基本調査」

■ 女性比率が高い「一般職」。総合職と一本化する動きも

 働く女性が増えているのに女性の管理職比率が欧米ほど上がらないのは、日本特有の採用・雇用形態に負うところも大きいといえます。つまり、依然として「コース(職種)別雇用管理」をしている企業が少なくないということです。
 総合職は将来の幹部候補として責任ある業務を担う一方、一般職は主に定型的な業務をこなし、総合職のサポート役を担う傾向にあります。令和6 年度の正社員(以下、正職員を含む)の男女比率※2 を見ると、女性の割合が27.6% と前年度から0.3 ポイント上昇しています。ただ、職種別に分解してみると、男性は総合職50.9%、一般職31.5% なのに対して、女性は総合職37.5%、一般職40.0% と、職種の中で一般職が最も多くを占めています。
 総合職と一般職では当然キャリアパスが異なり、給与面も総合職の方が高い傾向にあります。既に金融機関や商社などを中心に、一般職の区分を廃止して総合職への一本化に踏み切る企業が増えており、最近では製造業も追随する動きが見られます。ただ、こうした取り組みはまだまだ大手企業に限られるのが現状です。

■ 職種別正社員・正職員割合

出典:厚生労働省「令和6 年度 雇用均等基本調査」
注)企業がコース別採用制度を導入しているか否かに関わらず、実質的に近い職種に分類した

■ 男性の育休取得率が急上昇。特に東京都は54.8%

 女性活躍の推進には労働時間の長さや残業の有無、有給休暇の取得のしやすさなど、働きやすい環境かどうかが大きく関わってきます。出産・育児・介護などライフイベントと仕事を両立できる制度や環境の整備も不可欠です。長時間労働をよしとせず、成果で仕事を評価する仕組みもその一つでしょう。
 日本では週49 時間以上の長時間労働者の割合※4 は、2023 年では15.2%(男性21.8%、女性7.2%)に上ります。2010 年には23.1% だったことを考えると、企業努力もあって長時間労働者は大きく減少してきました。ただ、フランス8.3% やドイツ4.6% と比較すると、日本はまだまだ長時間労働者が多いのは明白です。

■ 長時間労働者割合(就業者)の比較

出典:独立行政法人労働政策研究・研究機構「データブック国際労働比較2025」

 女性が活躍できる社会への進展を図る指標の一つが、男性の育休取得率です。男性の育休取得が進めば、夫婦で育児や家事の役割分担ができ、女性の負担が軽減することが期待できます。職場への早期復職を後押しすることにもなります。
 令和6 年(2024 年)の育休取得率は男性40.5%、女性86.6% と、前年よりそれぞれ10.4 ポイント、2.5ポイント増加しました※2。特に男性は平成30 年(2018 年)には6.16% だったことを考えると、わずか6 年で急上昇しています。政府が掲げる男性の育休取得率の目標は2025 年50%、2030 年85% と非常に高く設定されていますが、それを達成する勢いです。ちなみに東京都に限ると、男性従業員の育休取得率(令和6 年度)は前年度から15.9 ポイント増の54.8%(令和6 年度 東京都男女雇用平等参画状況調査)と、既に目標値をクリアしています。

 特に男性の取得率が急上昇した背景には、令和4 年(2022 年)10 月1 日に「育児・介護休業法」の改正があります。この改正のポイントの1 つ目は、新たに「産後パパ育休(出生児育児休業)制度」が創立されたことです。これは、産後8 週間以内に4週間(28 日)を限度として2回に分けて取得できる休業のことで、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度です。男性の育児休業取得促進のため、取得ニーズが高い出生直後(子の出生後8週間以内)に、これまでよりも柔軟で取得しやすい休業として設けられました。そして2 つ目は、それまでは原則1 回しか取得できなかった育児休業が、男女とも2 回まで分割で取得できるようになったことです。実際、育児休業を開始した男性のうち「産後パパ育休」を取得した者の割合は約6 割に上る※2 ことから、この制度が大いに活用されているようです。

■ 育児休業取得率の推移

出典:厚生労働省「令和6 年度 雇用均等基本調査」
注)平成23 年度の[ ] 内の割合は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果

■ 若年層の高い育休取得意欲に、日本の変化を感じる

 世界経済フォーラムが発表した2025 年のジェンダーギャップ指数において、日本は世界148 カ国中118 位でした。残念ながら、2006 年の第1 回発表以来、下位30~25% が定位置となっています。実際、日本は諸外国に比べて家事・育児負担が女性に偏る傾向が強く、女性の「ワンオペ育児」が長年の社会課題となっていました。

 しかし、その状況に少しずつ変化も見られます。例えば、ワークライフバランスを重視する若者が増えています。積極的に育児に参加したいと考える男性も多く、育休取得の意欲も高くなっているようです。厚生労働省委託事業である「男性の育児休業取得促進事業(イクメンプロジェクト)」で実施した調査※6によると、18 歳~ 25 歳の若年層の約9 割が「育児休業を取得したい」と回答しています。男性に限っても約8 割に上り、取得期間も約3 割が「半年以上」を希望しています。

 ダイバーシティおよび女性活躍推進への取り組みは、企業のブランド価値向上につながるだけでなく、離職率の低下や優秀な人材の確保といった具体的な成果をもたらします。従業員が働きやすい環境・風土を醸成することは、企業が持続的成長を実現するために避けて通れない重要な経営課題といえます。実際、ここ数年で男性の育休取得率が急上昇しているのは、多くの企業がダイバーシティ推進の重要性を認識し、制度設計や運用改善に取り組んでいることの証左といえます。この流れをさらに加速かつ定着させていくことが、企業にとって希望ある未来を切りひらく鍵となるでしょう。

◆次回予告◆
第4 回のコラムでは、国内外の企業の女性活躍・ダイバーシティ施策に精通する識者に、日本のダイバーシテイ推進の本質的な課題と対策、これからの展望について聞きます。